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シニアライフセミナー資料
2025年5月28日のスライドです
講師 英の当日のコメントも
掲載いたします
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皆さん。こんにちは。今日は第一回のシニアライフセミナーにお集まりいただきありがとうございます。 最初に、今年のシニアライフセミナーを開催するにあたり、セミナーの目標についてお話ししたいと思っております。
私が地域かかりつけ医療・在宅医療に携わって28年が経ちました。この間に高齢者を取り巻く環境は大きく変化しております。 物価高などで生活自体が厳しくなっているところで、医療費や介護費負担が増加して、さらに核家族化の進展で、独居や老人同士世帯が増加しており、いざというとき頼れる人も少ない状況で、不安な老後を過ごしている方が少なくありません。
しかし十分な準備や適切な高齢期の過ごし方をすることで、若者たちに負担をかけずに、自分らしい老後を送ることができると私たちは考えています。そのためにどうしたらいいのか、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。 -
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こちらのグラフは上が男性、下が女性の平均寿命と健康寿命及びその差いわゆる支援や介護が必要となる期間を現したものです。
2001年から2019年の約20年間で、男性・女性ともに平均寿命も健康寿命も延びていますが。男性で平均9年、女性に至っては12年という期間、いわゆる虚弱で支援や介護が必要になる期間があり、その長さは変わっていないことがわかります。
これからの高齢者増を考えると、つまりどうしても自立できない期間をある一定の期間過ごさなくてならない高齢者がこれから増え続けるといえます。 -
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さてこのような支援や介護が必要な期間とは、どういう構造をしているか考えてみたいと思います。
健康寿命の延長もあり、自立期は非常に長くなっております。上記の図のように前期虚弱期~終末期がいわゆる健康寿命と平均寿命の差となり、平均ですが男性で9年、女性で12年あります。
状態が思い描きやすいように、杖歩行レベルを前期虚弱期、車いす移動レベルと後期虚弱期、ベット上寝たきりレベルを要介護期、そして食事などもとれなくなってくる時期を終末期と考えてそれぞれの時期の特徴をお話ししますが、一応にこの段階を少しずつ減る人もいますが、一遍に自立期から要介護期になる方や、一度後期虚弱期や要介護期になっても再び元気になられる方もいらっしゃいます。それぞれの虚弱の進行は一様ではありませんが、まずはこのような段階があることをご理解いただきたいと思います。
そしていわゆる要介護期以降については自分で自分のことを決めたりすることができない時期であり、この時期のことを事前に考えておくことで、周囲に負担をかけずに、自分なりの老後を過ごすためにとても大切といわれております。そのことをACPといいますが、次に詳しくお話しします。 -
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ACP、私なりに訳すると事前に自分の療養の仕方を考えておくことだと思っています。
特に自分で自分のことが決められない、伝えられない時、つまり要介護期~終末期の過ごし方を周囲の方々と相談しておくことが大切だと考えます。
例えば認知症や老化の進行で、自分のことを自分でできなくなってしまったとき、脳梗塞や外傷など突然要介護状態になってしまったときなどのことをあらかじめ想定して、救命医療や延命医療の在り方や、食事をとることが難しくなった時などの終末期医療の在り方や、自律的な行動ができない時の安全や周囲への迷惑にならないための療養場所の変更や行動制限の在り方、全く想定外のことが起こったときの代理決定者の在り方など、ACPは実に多岐わたります。したがって一朝一夕に決めることはできないので、長い時間をかけながら、またしっかり相談しながら、考えていくことが大事だといわれています。
いずれにしても、人生の終わりに、こんなはずじゃなかったとならないためのとても重要な備えになります。 -
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さてこれからは、高齢期・特に要支援・介護期のぞれぞれの過ごし方について述べていきます。
まず虚弱が始まる前、いわゆる自立期ですが、しっかりと成熟した老後の人生の日々の生活を楽しむと同時に、来るべき支援・要介護期に備えておく時期とも言えます。 具体的には、資金準備、虚弱に対する準備、さらに死後のことや生きがいづくりなどが大切だと思っています。
資金準備としては、生活費のほかに、虚弱期・要介護期には医療費や介護費用、さらには代理決定者に対する報酬などが必要になります。以前は会社を定年で引退した後は老後生活ともとらえられていましたが、今は元気高齢者も多く、80才近くまで働いていることも少なくありません。そのようなことで年金や貯蓄だけに頼らず、何らかの形での社会参加を継続しながら、資金準備をするといいと考えております。
また虚弱への準備として、一つは虚弱にならないための準備があります。それは病気や障害に負けない、余計な進行をさせないための病気のコントロールや予防、適度な運動や規則正しい生活を送りながら、何らかの理由で虚弱になったときでも困らないようなACP準備や保証人の準備、さらには自分が送るべき虚弱ステージの理解と過ごし方のギアチェンジです。
また死後の準備としては、遺言の整備、特にしっかりと準備をしたい。もしくは遺贈など遺産の有効活用をしたいと考えるときには、公正遺言証書を作成しつつ、遺言執行人を決めておくといいでしょう。
さらに、高齢期を生き生きと過ごすためには、若い時にはできなかったような趣味や旅行などもいいでしょうし、散歩などの規則正しい運動なども楽しまれるといいと思います。 また日本には優れたセーフティネットとして生活保護をはじめ様々な制度活用ができますので、老後を充実して過ごすためには、このような制度活用も大切と思います -
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前期虚弱期(自立支援期)は、いわゆる虚弱の始まりの時期になります。
リハビリなど自立に戻るための努力とともに、来るべき移行期に備えておく必要があります。 つまり介護保険申請や介護サービス利用開始とともに福祉用具の貸与や生活支援サービス活用などを行いつつ、自分の意向、ACPを周囲に伝えると同時に、保証人・後見人へつなぐバトンを準備する時期だと思います。 -
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後期虚弱期(移行期)はいわゆる非常に不安定期であり、入退院を繰り返したり、急激に状況が変わるなどして、本人の自助力が低下するとともに保証人・後見人など周囲のかかわりが大きくなる、いわゆる主客逆転が生じる時期になります。
状況の変化に応じて早めに介護サービスを増やすための、介護保険の認定を変えるための区分変更申請をしたり、それまで培ってきた保証人などとの関係を大切に、自らのACPをより精度を高めるための修正する時期とも言えます。
この時期がある意味一番不安定な時期といえます。 -
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要介護期(保護期)は、寝たきりに近い状況で、食事や排せつ,移動などに介助が必要な時期であり、身体介護を重度化する必要がある時期になります。この時期はどこで、どのような介護を誰がするのか?が問われる時期になっていますが、十分なACPや保証人の選定がなされなければ、周囲の人の裁量にゆだねられざるを得なくなるという特徴もあります。
居宅で介護保険サービスを主体にできる範囲で対応してもらう。
自費のサービスまで活用する。施設入所を中心にする。
家族のだれにどこまでの協力を仰ぐなどを考えておくと同時に伝えておく必要があります。 -
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最後の終末期(緩和期)では経口摂取が難しくなるなど生命維持機能の低下がみられる時期であり、いわゆる医療的介護つまり吸引や点滴,経管栄養など常時の医療をどこまで、誰が行うのか?ということを考えておく必要があると同時に、状況変化時などにどこまでの治療的対応を希望するのかを決めておく必要があります。
自宅で症状緩和や、苦痛回避を中心とするのか?救急外来や入院治療で根本治療的対応を希望するのか?
ここでの医療的対応の在り方は非常に差異が大きいので、ニュアンスを伝えるにとどまざるを得ない場合もありますが、しっかりこの時期があることを保証人などに伝えておいてほしいと思います。 -
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もう一度支援虚弱期の過ごし方の全体を振り返りますと、自立期~前期虚弱期~後期虚弱期(いわゆる移行期)~要介護期~終末期となります。
これらを、決して行き当たりばったり過ごすのではなく、それぞれのステージ毎ににしっかり過ごすことが大切なので、ぜひこのシェーマを念頭に置きながら、特に自助困難期に備えていただきたいと思います。 -
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さて今後のシニアライフセミナーの開催予定ですが、8月と12月を除いた毎月第四水曜日午後1時半からこちらの会場およびWEB配信、さらにはアーカイブ配信などを行っていきます。
1年を通じて高齢期のいろいろな準備ができるようにお手伝いしていきたいと思います。ぜひよろしくお願いします。 -
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今日のお話をまとめておきます。
人に頼らず、安心して高齢期を過ごすためには、まず早めの準備、自助を伸ばしておくことが大事です。
特に大事なのは、ACPと保証人、さらに虚弱の進行により、ステージが変わり、その時々の最適なギアで進んでいくギアチェンジが大事です。そのほか、制度やサービス、機器やデジタルなど活用しながら、最後は高齢期ならではの、生きがいや仲間づくり、社会貢献なども考えていただければと思います。 -
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ゆとりある老後とは、老後の現実から目をそらさず、しっかりと非自立期・要介護期に備えることから始まると考えています。
ぜひ皆さんと一緒にゆとりある老後の在り方を考えていきたいと思います。 これからもよろしくお願いします。
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